【FRANK WEDNESDAY】
Why Trap Lives Matter

【FRANK WEDNESDAY】
Why Trap Lives Matter

Futureのトラップアンセムに潜むメッセージ。

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FutureSt. Louis でドラッグ・ディーラーの知り合いと街をドライブしている時その知り合いが彼にFutureの曲「Trap N***as」の持つ意味と力について語ったという、「あの曲はTrapに居る連中を神にした、あの曲のおかげでオレ達は自分の事を神の様に思う事が出来た。Trapに希望を与えてくれたんだ」(Trapとは違法ドラッグを販売するために占拠する郊外の家や地域の事を指し、その危険な生態系自体を指す時もある)

「Trap N***as」の持つメッセージに共感出来る連中には、この曲がドラッグ・ビジネスの唄で、自分はドラッグ・ディーラーだ!とだけ唄っている軽薄な唄という認識はない。イントロで 「辛い世の中だけど、俺らは儲け続ける・朝起きて歯を磨く前にストラップ(拳銃)を巻く」と語りかけるがこれをTrapのライフスタイルの煌びやかな一面と捉える事も可能ではあるが、そのラインのデリバリーと不吉なSouthsideのビートによりそれが、喜びに満ちたTrapの賞賛ではない事に気付かせてくれる…

曲を聞いただけでその恐ろしいトーンを信じきれない人は、是非Unkle LucがディレクションしたPVを見てみてほしい。ドラッグの仕事をやった事がある輩にはごく普通の1日に見えるだろう、脱ぎ捨てた洋服が無造作に周りを囲むマットレスの上で目を覚まし、カウチ以外に装飾品が一切無いリビングルームでダイスゲーム、荒れ果てた一戸建ての外でダブルカップ(Leanをソーダと氷で割ったカクテルを2枚重ねのコップに入れた物)をすする絵が浮かんでくるがそれは、魅力的なものでは決して無い。

Futureのドラッグ・ビジネスについての複雑な心境が伺う事が出来るのは1バース目の最後の部分だろう、「ドラッグを仕入れた/やつらは捌ききれねえぞと笑った/でも自分に何百回とそんなの知るかと繰り返し言い聞かせた」これはトラップハウスの同居人が笑ったという事よりこの一連の普通とは思えないアイデアを何度も何度も自分に言い聞かせた挙句、狂ったアイデアが自分の中に染み込んでしまった様なのだ。これは、そこらじゅうに居るドラッグを生業とするハードボイルドなイメージのラッパーたちへ深い疑問を投げかける。犯罪の生活は、それによって己を強くしようとする輩やモラルをしっかり持った人物を無責任なストリートの正義に甘んじさせているのではないのか?

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Futureはネオソウルを歌うR&Bシンガーの様に赤くて丸いサングラスをかけている訳ではないが、この曲にはアンセム的な素質がある。Southsideによるあからさまな音のバランスとFutureのシンプルに反復される主題「Fuck what you heard, god blessin’ all the trap n:::as」(訳:お前が聞いたことなんて糞食らえ/Trapに居る奴らは神からの幸福を授かる)の二つの要素が混ざり合う事によって感染力の高い楽曲となりドラッグディーラーの心を捉え、彼らが賛歌と感じ力づけられるのは理解できる。

もう一つ忘れてはならないのは、この曲は二人称で書かれている事だ。全ての歌詞が誰でもないが親しい仲の「おまえ」に宛ててあり、それは昔の自分へ、又は実際に聞いている「おまえ」に宛てているのかもしれない。St.Louisのドラッグ・ディーラーは自分に宛てて唄われていると感じた様だが、ここを曖昧にしている事によって誰でもこの曲が自分の人生の事の様に共感でき、それがFutureの狙いだった事は間違いない。

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クラブのダンサーだとしてもウェイトレスだとしても自分がお金を稼ぎに行く場所が自分のTrapなんだ、今そこで仕事をしていたとしても、その環境から発展できれば幸せなんだとあるインタビューでこの曲についてFutureが説明している。それは「Trap N***as」で送っているメッセージと同じで、個人個人の決心と努力が日々の仕事人としての現実をクリアしていくというメッセージだ。同時にこの曲の中でそのメッセージが宛てられた人々は、自ら進んでこの環境に身を置いた訳ではなく、Futureが以前のインタビューで明かした様に、Trapという言葉を自分がそこに囚われているという意味でTrapと使う、経済的/社会的な理由でこの現状に囚われて出ていけない人々を指している。「Trap N***as」の中でこの手のドラッグを使った職業を立派なキャリアとして認めているわけではないが、生活をつなげる術としてドラッグを売らねばならない立場の人間に対して強くある様にエールも送っている。

Futureを、大した意味のない空虚なパンチラインばかり作るアーチストとみる人もいるだろう。ドラッグの使用と犯罪を美化していると見る人もいるだろう。だが、もう一歩踏み込んで見てみると実は違うもっとディープで誠意のある物語が語られている事が分かる。超ガリ勉の有名エリート大学の教授の様に知識をひけらかし自分たちの人生を見直せと窘めてくるのではなく、彼のメッセージは人生の移り変わりについて現実的で、教訓的というよりは協力的だ。このどちらかを自分の能力を疑うような暗い時期に選ぶかは、個人の自由だが「Trapに居ても幸福になることはできる」というメッセージを心に留めておくことは決して無駄ではないはずだ。

 

TEXT by EVAN WOOD
Curated and Translated by Akeem the Dream
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