【FRANK FRIDAY】Jinmenusagi / ジメサギ

【FRANK FRIDAY】Jinmenusagi / ジメサギ

“ジメサギ” の5枚目となるセルフタイトルアルバム。

Jinmenusagi

Jinmenusagiは1991年、平成3年生まれ、東京都千代田区出身と聞いて私は俄然興味が沸き出した。と言うのも中学3年間を千代田区で過ごした私の第二の地元とも言える場所の出身なのだ。千代田区は江戸城、皇居、国家の中枢が集中している区にあたる。そんな東京の中心地に今も住む彼と実際に話した際に地元にHIPHOPシーンはあるのかを聞いた事がある。答えは即答で「無し」だった。つまり地元にシーンが存在しない。何故そんな質問をしたかと言うと、人間的な孤独感とは無関係だが、彼の作品を通じて感じた事のひとつとして地元のだれかの影響よりも自分自身で探りながら辿り着いた世界観なのではないかとを感じることがあったからだ。

Jinmenusagiは中学生の頃にAKONEMINEM等のHIPHOPに触れ、その後BEASTIE BOYSRUN DMCといったわかり易いラップが特徴的なオールドスクール、本人曰く「スローなラップ」へと興味をもったそうだ。USのラップが入り口となり、母親が聞いていたRIP SLYMEで日本のラップを知る。2007年からミクスチャーバンドのラップ担当としてティーン時代からからキャリアをスタートさせ、インターネットを発表の現場として活動の幅を広げていた。

1stアルバム以前の自主活動音源をまとめた過去作品集CD-R”Old Rabbitten”でインターネット発のMCを多数発掘、リリースしてきたレーベル LOW HIGH WHO?から2011年1月にリリースし、2012年には1stアルバム”Self Ghost”をリリース。以降は毎年アルバムを発売し、その間にもフリー音源、ミックステープを発表し続けている。中でも日本のヒップホップシーンにスキルの高さと大きな存在感を示した名作4th「LXVE 業放草」を最後に2015年にはLOW HIGH WHO?から飛び出し、矢継ぎ早に自主レーベル”インディペンデント業放つ“を立ち上げる。さらにJinmenusagiの名を広げた作品として新進気鋭のサウンドユニットHyperjuiceのEP「Lights」のリード曲「City lights」への客演が大きな話題となった。すでにかなりの情報量かもしれないがコレまでのキャリア、経緯を踏まえた上で5thアルバム「ジメサギ」をレビューしていこう。

業放

自主レーベル”インディペンデント業放つ”からの1stアルバムとなる本作の1曲目として相応しい意思表明的なタイトルM1″業放キープローリン” はまるでUSの作品かと錯覚するほどの日本語の発音の妙が冴え、1人で数パターンの声質を使い分けミックスされた細かい技術に圧倒される。M2″Tokyo Town”はゲストにY’sとなっているが本作よりも先にリリースされたY’sによるミックステープ「SMALL ASIAN THE MIX TAPE」では反対にfeat.Jinmenusagiとなっており、他2曲にも参加していることから共同作業の中で生まれたものだろう。ここでのY’sのバースはインパクトが強く、吐き捨てる様な含みを持ったフローとリリックが耳に残る。ここ最近のY’sのバースでもベストと言えるだろう。ダークなTOKYO像がスリリングに描かれるMVも必見だ。

M3″Voodoo” はタイトルの意味合通り神秘的だ。シンプルなコード進行にタイトなビーツ、音数の少ないトラックにスキルフルに強弱を付けて展開するライミングは聴き所の一つだろう。アルバムの発表前から現場では披露していたM4″ガウチョはダサい”のガウチョは女子大生を中心に大人気のガウチョパンツのことであり、実は男性受けが悪いと風評されているファッションアイテムのひとつだ。女性には耳が痛い様な言いたくても中々言えない本音を広く展開したほぼ1バースのみのショートトラック。

ファッション繋がりで粋な選曲となったM5″Vans Ninja”は前々から”俺はナイキを履かない”とリリックで言っていたことを拡大した曲だ。Vansと言えばスケートボードを連想するが「ペニーに乗ってる大学生殺す」のフックが印象的だ。また彼は実際にNIKEは履かないらしい。

個人的に聴くのが楽しみだった目玉のひとつM6″Nanana”は#FightclubJPを仕掛け、一躍有名になった韓国人ラッパーMOMENTが参加。前作でもこの共演は聴けるのだが、日本のラップ界でも最高峰のスキルを持っている両者の共演は毎度興奮に値する。しかもこの曲のMOMENTは圧倒的だ。女性的な猫撫声から本来の男性声へ変化、激情し、テンションをコントロールするラップは奇跡的な神ラップだ。

M7″Su My Di”はA$AP Ferg的なドラッギーな雰囲気を持ったMASSIN COMPRESSORのビーツが素晴らしい上に虫声VOCALの処理など細部にこだわったミックスが素晴らしい。M8 “ペットの象”はコミカルな一面を見せるバラエティ感溢れた面白い作品。M9″BABEL”はアルバムの中で1st MVになったシングルカット的な一曲。MVで初めて見た時にはこの煙たい雰囲気には吹っ飛ばされた。オリエンタルな雰囲気のビーツに倍速でかっ飛ばす東京都足立区出身の24歳のラッパーMATOのフローは一度聴いたら忘れることが出来ない衝撃だ。MATOはフリーDL可能なミックステープの他にSEEDA & DJISSO / CCG13へこのコンビで参加しているがラップスキルが科学反応を起こした名作”MAZDA”も是非チェックして頂きたい。その他にもJinmenusagiと同世代の才能有るラッパーが参加している。オリジナルVersionも存在するM11″このまま”ではサトウユウヤによる声質を変化させながら小節を刻む超人的スキルも必聴だ。

M10″Uganda Tiger”ではOMSBの土着感溢れた変則的なビーツに添い寝するように絡み付くフローは流石のスキルを見せてくれる。さらに名古屋マナー全開フローが最高なラッパーANPYOが跳ねる様なラップを披露する。最後はこのアルバムの最高の目玉となるゲストMC三者三様のマイクリレーが激アツなM12 “IT’S ALL RIGHT” はGOKU GREEN、OMSB、SEEDAが参加。特筆すべきはTRAPビーツを乗りこなすOMSBだろう。しっかりとワードを叩き出すまったくチャラさの無いハメ方は素晴らしい。

今回のアルバムはProduceの大半をJinmenusagi (Riou Tomiyama)本人がこなし、TRAPサウンドを中心にした作りとなっていて、ある意味で時代に沿う様な趣味全開の作品なのかもしれないが、リリックの中に溢れる圧倒的なあまのじゃくな感性、類い稀な才能を考えると今後が末恐ろしい。インターネットから発信し続けてきたラッパーがストリートでも人気を得た作品と考えると非常に重要作だ。

このJinmenusagiのHIPHOPへのアプローチは今後の日本のラップシーンにとって大きな功績を残すかもしれない。2016年の彼の動向が気になる方はツイッターアカウントをフォローしておくことをオススメする。

Text by Sir Y.O.K.O.PoLoGod.

Photoby@nicedreams_jp

Track List:

01. 業放キープローリン (Pro. Riou Tomiyama)

02. TokyoTown feat. Y’S (Pro. Riou Tomiyama)

03. Voodoo (Pro. Riou Tomiyama)

04. ガウチョはダサい (Pro. Riou Tomiyama)

05. Vans Ninja (Pro. Dischord)

06. Nanana feat. MOMENT BASTET (Pro. DubbyMaple)

07. Su My Di (Pro. MASSIN COMPRESSOR)

08. ペットの象(Album Ver.) (Pro. Riou Tomiyama)

09. BABEL feat. Mato (Pro. Riou Tomiyama)

10. Uganda Tiger feat. ANPYO (Pro. OMSB)

11. このままで feat. サトウユウヤ (Pro. Pigeondust)

12. IT’S ALL RIGHT feat. GOKU GREEN, OMSB, SEEDA (Pro. Riou Tomiyama)